第三章 連行





信代が千絵たちの家に着いたとき、日は暮れて辺りはすっかり暗くなっていた。高台にある閑静
な住宅街の一画にある母娘の住む家は、人通りも絶えた街路樹の前に静かに佇んでいる。信代
は無言のまま、ドアを開けて中に上がり込んだ。玄関も、廊下も、灯りが消えて、無人のようであ
る。信代は廊下の突き当たりの襖を開けた。中は八畳の和室で、夜具が乱れたままの状態で、枕
も三つ散乱している。剛蔵が母娘の肉体を思う存分蹂躙したまさに落花狼藉の跡も生々しかった。
つい先刻、一五歳になったばかりのめぐみは母の面前で無理矢理剛蔵に破瓜されて処女を奪わ
れたばかりである。めぐみの血で真っ赤に染まった純白のシーツは撚れて皺になり、陵辱の凄ま
じさを物語っていた。剛蔵は上機嫌で脇のテーブルのところでもろ肌姿の半裸の状態でウィスキー
を呷っている。顔から胸まで真っ赤になって、酒臭い息を吐いていた。母娘は、夜具の脇に全裸の
まま、並んで正座している。すっかり沈みきった様子で、身体を寄せ合って俯いているばかりであっ
た。 衝撃の大きさに完全に打ちのめされた様子である。肉交の後も剛蔵は二人に着衣を許してい
なかった。全裸のまま二人をキッチンに立たせ、肴を用意させて一人満足げに晩酌をしているのだ。
 
「社長、遅くなりまして申し訳ございません。」

信代の挨拶に酔った眼を向けると、にんまり笑いながら、言った。

「信代、おめえの言うとおり、めぐみはまっさらだったぞ。これからの調教が愉しみだ。」

「アラアラ、それはよろしうございましたこと・・・おホホホ・・・でも、さっきも申しましたように、牝ども
を甘やかしてはなりませんわよ。」

「ああ、分かっておるわい。信代、ちょっと、こいつらの胸を見てみい。」

「あらまあ、これは・・・」

信代は目を丸くした。二人のまるい乳房には、タバコの火を押しつけられたらしく、赤い火傷の痕が
残っている。

「最初が肝心じゃからな。これからは肉のつとめを果たす毎に、こうした痕を刻印することにしたんじ
ゃよ、ハハハハ・・・」

「そりゃよござんしたねぇ。牝であることを忘れないよう、また、旦那様の味を忘れないようにするた
めにも、それは絶対必要なことですわね。で、社長、早速予定通り始めてもよろしいでしょうか?」

「あ、うむ・・・後は任せるぞ」

剛蔵はのっそりと立ち上がった。剛蔵が部屋を出ていくと入れ替わりに、二人のヤクザが入ってきた。

「姐さん、こいつらですかい?今度の新しい社長専用のメス奴隷というのは?」

茶髪に染め、耳にピアスをした不健康そうな若いヤクザとスキンヘッドの中年のヤクザが好色な眼
差しで、二人の裸身を舐めまわしている。恐ろしさとおぞましさに母娘は、身体が竦んで動けなか
った。
 
「ああ、これから、メスとしてみっちり仕込まなければならないからね。商品として使い物にならない
ようにしては駄目だけど、手加減は無用だよ。いいね、銀次。徹底して責めて責めて責め抜いて、
牝の心得を頭に叩きこむんだよ!」

「分かりやしたぜ。姐さん、任せておいてくだせえ」

中年のスキンヘッドがニタリと笑う。母娘は蒼い顔で身を寄せ合い、必死で乳房を抱きしめてふるえ
るばかりであった。信代そんな二人を傲然と見下ろす。
 
「お前たち、さっき泣きながら誓った事を忘れていないだろうね!」
 
不安そうな面もちで、二人はかすかに頷いた。
 
「よし、それじゃ、これを見てごらん!」
 
信代が母娘の前に突きつけたのは二通の封書である。最前、剛蔵が信代から渡されたものであ
った。表書きを見たとたん、千絵の白い頬がサッ、とこわばった。「牝奴隷誓約書」という禍々しい
骨太の大文字が目の中に飛び込んできた。千絵の白い喉から甲高い悲鳴が迸った。
 
「読んでごらん!」
 
内容に目を通すと、見る見る千絵の頬は赤らみ、狼狽えた表情になる。
 
「そ、そんなっ・・・・ひ、ひどいっ・・・あ、あんまりですっ・・・・」
 
「何があんまりなんだ?千絵」
 
銀次はのっそりと訊ねる。蛇のように冷たい視線に射すくめられ、千絵はそれ以上声が出なくな
った。
 
「牝になりきるという誓いをさっき玄関でしたことを、忘れたのか。お前は?え、」
 
「い、いいえっ・・・け、けっして、そ、そのような・・・・・」
 
「うむ、ならいい。声を出して読んでみろい。」

信代に突きつけられ、涙に濡れた瞳を紙面に向ける千絵であった。
 
 〈牝 奴 隷 誓 約 書〉

第一条
 今日より私、高山千絵とめぐみの母娘は、黒羽剛蔵さまに飼育される牝奴隷としてお側にお仕
 えすることを誓います。剛蔵さまのお気に召すような、可愛いお××こメスとして生まれ変わり、
 一生懸命、からだでのご奉仕に励むことを誓います。

第二条
 私たち母娘は、一日も早く剛蔵さまの好みの可愛いお××こ牝になれるよう、お××このつとめ
 に励み、お××この芸を磨き、剛蔵さまにお××この芸を愉しんでいただけるよう、毎日、修行に
 励みます。

第三条 
 私たち母娘は、剛蔵さまの玩びものであるしるしとして、今日より、スッ裸で剛蔵さまのお側にお
 仕えし、剛蔵様のお許しがないかぎり、今日かぎり、ブラジャーはもちろん、パンティーは穿きま
 せん。

第四条

 私たち母娘は、使役される場合を除き、剛蔵さまの特別のご指示かお許しがないかぎり、立って
 歩いたりせず、いつも四つん這いで生活いたします。剛蔵様の前に出たときは、いっぱいに股をひ
 らいて、奥の奥までごらんになれる態勢でご挨拶いたします。また、剛蔵様のお姿を見かけたとき
 も、同様の姿勢で、旦那様のお目に止まるのをお待ちします。

第五条 
 わたしたち母娘は、剛蔵さまのお言い付けをしっかり守り、剛蔵さまのお指図に従って生活し、ご
 命令の内容が、おんなにとって、どんなに辛く、哀しいことであっても、決して拒みません。剛蔵さ
 まのご命令を絶対のものと心得て、おっぱいをピーンと尖らせてしたがいます。

第六条 
 わたしたち母娘は、剛蔵様にあそんでいただくための家畜として十分に愉しんでいただけるような
 からだになるため、どんなに辛く激しい調教でも、歓んで受けます。

第七条 
 わたしたち母娘がからだのご奉仕で剛蔵さまのご機嫌を取り結ぶときは、牝であるために受けな
 ければならないお仕置きや辱めを積極的にねだります。

第八条 
 私たち母娘は、剛蔵さまのお許しがないかぎり、決してご不浄には行きません。剛蔵様のお許し
 を得て、剛蔵さまのお命じになる場所で、剛蔵さまの命じる姿勢で用を足します。

第九条 
 私たち母娘は、剛蔵さまの御事業のための労働力として、剛蔵さまが定期的に開催なさるお座
 敷ショーに出演し、満座の中でのレズショーや実演白黒ショー、ストリップ、花電車等、牝として
 身につけなければならない芸をご披露し、宴席を盛り上げることを誓います。

第一〇条 
 私たち母娘の肉体は、剛蔵さまの所有する家畜として、富坂信代さまに一切管理していただき、
 剛蔵さまの御事業のため、または剛蔵さまの趣向のため、乳首やラビアへのピアス、刺青、焼
 き印等どのような肉体改造も喜んで受けることを誓います。

第一一条
 私たち母娘が、月経になったときは、すぐに剛蔵さまにお伝えし御指示を仰ぎます。月経中であ
 っても、からだのご奉仕や、膣へのお仕置きや玉割りのお稽古を嫌がりません。

第一二条 
 私たち母娘は、剛蔵さまのお気に召すような従順で忠実なお××こ牝になれますよう、一日三
 回「牝の誓い」を暗唱することを誓います。

 以上のことをしっかり守り、旦那さまが千絵とめぐみのからだに飽きられて、御処分なさるときま
 で、かわいいメスになりきって誠心誠意おつかえすることを誓います。

 私たち、千絵とめぐみの母娘は、メス奴隷の誓いの証として、ここに二人のお××こで押印いた
 します。  
             
                                                 高山千絵
                                                 高山めぐみ
     
                                                平成X年X月XX

 声もかすれ、途切れ途切れに読み上げる母の声に、娘のめぐみは激しくからだを震わせた。
 
「政夫、お前、今の千絵の声が聞こえたかい?」

信代はうすら笑いを浮かべながら茶髪の若いヤクザに訊ねた。
 
「いんや、姐さん、俺、ちょっと耳が悪いもんでよう、よく聞こえなかったんだけどな。」
 
政夫は頭を掻きながら応える。
 
「俺もよう、聞こえんかったぜ。奥さん、今、なんて言ってたんだね?」
 
銀次もスキンヘッズの頭をつるり、と撫でながら言った。

「そ、そんなっ・・・・」
 
鬼のような男女たちに、母娘は絶句した。血を吐くような思いで読み上げた誓約書を繰り返し
て読めというのだ。

 
「聞こえないんじゃしょうがないねぇ。千絵、もっと大きな声で言わなきゃ駄目だよ。それも、も
っと心をこめて読むんだよ。これからのお前達の生活に関する大事なことがらじゃないか。」

嵩にかかったように信代はきめつけた。千絵は泣きながら、誓いの言葉を繰り返す。
 
「心がこもってねぇ!、もういっぺん!」
 
「駄目だ、駄目駄目、もういっぺん!」
 
男たちも面白がって、何度も何度も繰り返させる。
 
「めぐみ、お前も一緒に声を合わせていってごらん!きちんとできるまで何度でもやらせるか
らね!」
 
母娘は、声を引きつらせ、ヒステリックに泣きじゃくりながら、幾度となく屈辱的な牝奴隷誓約
書を口にさせられたのであった。
 
「うぅっ・・・・うっ、・・・」
 
辛さと衝撃のあまり、二人はついに異様な声を張り上げ、気を失なった。信代が用意してきた
機材で二人の屈辱的な誓いをしっかり録音したことに、哀れな母娘は気づかなかった。

「アラアラ、だらしのない牝だこと、この程度で気絶するなんてねえ、ちょっと、政夫、このこた
ちに気付けを射っておやり。」
 
「へいへい・・・」
 
政夫は信代のバッグを受け取り、中からカプセルを取りだした。注射針に吸い込み、母娘の
腕に射ちこむ。
 
むむぅっ・・・・
 
やがて、息を吹き返した母娘は、相変わらず怖ろしい悪魔たちに取り囲まれているのに気づ
いて、あぁっ、と絶望と哀しみの表情を漲らせた。
 
「千絵!途中で失神するなんて、行儀が悪いね。まだ、署名が残ってるんだよ。さっさと署
名しないか!」
 
無理矢理ペンを持たされ、二人は弱々しく誓約書の末尾にサインをさせられた。
 
「姐さん、最後はこいつらのオ××こでの印影が必要なんじゃなかったですかい?」
 
銀次が信代に訊ねる。
 
「まあ、そうだけど、それは社長の前でさせたほうがいいでしょう。内容をしっかり暗記させた
うえで、自筆で書かせようと思ってるんだよ。その上でサインと印影だね。社長もその場面を
をごらんになりたいでしょうからねぇ、おホホホホ・・・」
 
信代はけたたましく笑った。ついにこの臈長けた美貌の夫人と、清純で可憐な美しい娘を完
全な牝に堕としたのだ。信代の哄笑はやまず、二人の肩を何度となく気が狂ったように笑い
ながら叫んだ。
 
「おホホホホ・・・これで、お前たちは、パンティー一枚穿くこともできない、お××こ専用の牝
ブタになったんだよ、おホホホホ・・・さ、言ってごらん、あたし達はオ××こ専用の牝ですって
ね、おホホホホ・・・」



                    cccccccccccccccc

 

「さ、牝ども、そろそろ出発だぜ。」
 
銀次が、がっくりうなだれている母娘に声をかけた。
 
「ど、どこにいくんですの?」
 
ヤクザ二人に肩をつかまれて、二人はハッとして、乳房を抱きしめ、不安そうな声で、母娘は
異口同音におずおずと聞いた。
 
「そんなこと、お前たちは知る必要はないんだよ・・・さっさと立つんだよ!」
 
銀次は太いロープを取り出す。二人の細い喉から、再び甲高い悲鳴が迸った。連れ出された
ら最後、もう、戻ってこれないのではないかという恐怖が二人の全身を貫いた。
 
「い、いやっ、いやですっ・・・・あぁっ、か、かんべんしてっ・・・」
 
悲鳴をあげて、千絵は立ち上がると、めぐみを引き寄せ、乳房をかばいながら逃れようとする。
信代は、千絵の前に立ちふさがると、髪の毛を手荒くひっつかむと、ぐいっと引っ張った。
 
「往生際が悪いよ、千絵!いつまでもいいところの奥さん気取りでいるんじゃない!」
 
抜けるような痛みに堪えるまもなく、バシッ、バシッ、と容赦なく、ビンタが張られた。凄まじい
ビンタが、部屋中に響きわたる。何度も何度も、続いた。千絵の白い頬に真っ赤な信代の手
形が鮮やかに残る。口内を切ったとみえ、血が滲んだ。髪の毛をひっつかまれ、揺すぶられ
ながら、千絵はイヤというほど、頬を張られた。髪の毛をひっつかまれ、壁にゴン、ゴンと頭を
叩き付けられる。怖ろしさのあまり、めぐみは身動きもできず、母への無体な暴力に怯えるば
かりだ。
 
「ひぃぃっ、ひっ、ひっ・・・」
 
千絵のからだは左右に揺れる。
 
「まったくききわけの悪いメスだね。これから、芸をいろいろと仕込まれなければならないん
だからね。」
 
信代は千絵の陰毛を引き毟った。
 
「ひぃぃっ・・・ひっ、ひっ・・・」
 
真っ白い千絵の腹に血が滲んだ。千絵の抵抗が止んだ。床の上に崩れ落ちると、面を両手
で覆って、弱々しいすすり泣きに変わる。信代はそんな千絵の髪の毛をひっつかんで、千絵
の秘丘を荒々しく足袋でなぶりながら宣告した。
 
「これからは、ここでご奉仕するために飼われる牝なんだよ、おまえたちは、え、分かったか
い!さ、お立ち!、泣くのは、だんな様にもてあそばれるときだけでいいんだよ!これから、
お前たちは、連日連夜いじめ抜かれて、たっぷり泣く毎日なんだからね!」
 
信代は酷薄に宣告する。
 
「一々、手数をかけさせるんじゃねぇ!おめぇらには、これからは、一切、自由なんかねぇん
だ。ケツの穴までまるだしにして、嬲りものにされる毎日なんだからな!わかったか!」
 
政夫もドスを利かせた声で凄んだ。千絵もめぐみも怖ろしさのあまり、頬をひきつらせて、声
が出なかった。信代はロープを取り出した。
 
「さ、手を後ろにまわしな!」
 
邪険に人妻の両手を後ろ手にねじ上げると、背で交差させる。そのまま、容赦なく手首から
胸へと巻き付けた。
 
「ああっ、うぅっ・・・」
 
思わず、うめき声が上がるほど、いっぱいに縄を引き絞られ、白い豊かな乳房が、胸の上下
に回されたロープの間からくくり出される。信代は、千絵を後ろ手に高手小手に縛り上げる。
続いて、めぐみも同じように後ろ手に厳しく縛り上げられた。
 
「あぁっ・・・うぅっっ・・・」
 
縄目のきつさに、母娘は呻いた。
 
「これからは、お前たち牝は、お××こやケツの穴でバナナを切ったり、卵を出し入れしたり
して、ご主人様の機嫌を取り結ぶことも覚えさせられるのさ」
 
「用意はいいようだね。それじゃ、でかけるとしようかね」
 
キセルをくわえて信代は、宣告するように言った。縄で、無惨なまでに括り出された。

「ま、待って、くださいまし・・・そ、外に出されるなら、せ、せめて、肌を覆うものを身につけさ
せて・・・」
 
悲痛な声で千絵は叫んだ。
 
「なに言ってるのさ!まだ、自分の立場が分かってないようだね!お前たちは、メスなんだ!
だんな様のなぶりものとして飼われる家畜は、いっさい、衣服は許されないんだよ。」
 
信代は酷薄そのものだ。
 
「お、おねがいです・・・せ、せめて、めぐみだけでも・・・」
 
泣きながら母は叫んだ。
 
「何言ってるのよ。めぐみもお前と同じ淫売奴隷に堕ちたんだよ。これからお前たちは、パン
ティー一枚身につけることなんかできないんだよ。」
 
ヒンヤリとした冷気が肌に突き刺さる。その中を全裸の母娘は、泣きじゃくりながら、後ろ手
にくくり上げらたまま、玄関の外に連れ出されたのだった。黒い大型のリムジンが玄関の前
に横付けされている。夜の帳の中で、それは不気味に大きく二人の前に押しはだかっていた。
 後部座席に押し込まれると、二人はすぐに、目隠しをされ、猿ぐつわをかまされた。



                     cccccccccccccccc
 
 

何時間走ったことだろう、いつの間にか泣き疲れて、眠ってしまったようだ。
 
「フフフ・・さ、着いたよ、」
 
信代は含み笑いをしながら、ドアを開けた。縄尻をつかまれて、車外に連れ出された二人は、
思わずよろける。縄尻を取られて、砂利道を歩かされる。裸足の足の裏に細かい砂利がくい
込む痛さに二人は呻いた。玄関を入ったところで、目隠しを取られた。そこは広い御影石の
土間で、一流の料亭を思わせる佇まいである。以前、千絵が呼び出されたのとは、違う場所
である。二人とも眼を真っ赤に泣きはらしたまま、こわごわと左右を窺った。邸内は広く、長い
廊下を歩かされ、いくつも角を曲がり、最後に階段を下りさせられた。連れ込まれたのは、高
いところに小さな明かり取りの小窓一つがあるだけの、薄暗い地下室である。奥には、太い
鉄格子のはまった。狭い檻があった。一メートルほどの高さしかないから、中に入ったら立つ
ことはできない。二人とも生きた心地がせず、ブルブル全身をふるわせている。
 
「さ、お入り!、ここが、ここが、これからお前たちの住むところだよ!」
 
頑丈な錠を外すと、信代は、ぐいと顎をしゃくって、入るように命じた。
 
「い、いやぁっ、いやですッ、・・・」
 
二人は弱々しく哀訴した。無益と分かっていながらも、後ろ手にくくられた両腕を必死で振っ
て、抵抗する。しかし、屈強な二人の悪魔にか弱い女が叶うはずがない。 「いつまでの手間
をかけさせるんじゃねぇ!いい加減諦めな!奥さん」再び、容赦ない猛烈なビンタを雨のよう
に浴びた。唇が切れ、二人の抵抗が弱まって、シクシクかぼそい泣き声に変わると、信代は
情け容赦なく、二人の髪の毛をひっつかんで、檻の前まで引きずっていった。足を上げて、中
へと突き飛ばす。ガチャリ、と音を立てて、鉄の檻に閂がかかる。
 
「逆らった罰として、今日は縄を解かないからね。後で、また来るからね。それまで、めぐみに
因果を含めておくことだね」
 
信代はあざ笑いながら、男と立ち去った。
 
「お、おかぁさま、わ、わたしたち、ど、どうなるの?」
 
悪魔たちが去って、地下室が静かになると、めぐみは、母に躰を投げかけて泣きじゃくった。
二人とも縄付きのまま牢に入れられたので、互いに抱き合って慰め合うことすらできない。
 
「か、堪忍してっ、めぐみちゃん・・・ま、ママと一緒に地獄に堕ちて、き、きっと、助けが来る
わ・・・こ、こんなことが続くはずがないわ・・・」
 
千絵もおろおろ声で娘を必死で慰める。二人は、ぴったり身を寄せて、嗚咽するばかりであ
った。






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