理不尽なる要求

「も、申し訳ございません・・私が・・私が、思い違いをしておりました・・どうか、どうか・・お許しくださいませぇえ〜っ!」

素っ裸になって土下座した女が、悲鳴のような声を絞り出している。

「そう、そこまで言うのなら許してあげてもいいわよ!いいこと、このあとすぐに被害届を取り下げなさい!」

足下に平伏す女を小気味よげに見下ろしながら、蛭ヶ谷市長の君嶋玲子はすらりと伸びた足先で、泣きべそをかいた女の顔を床に押しつけるのだった。

「わ、わかりましたわ!すぐに・・すぐに・・取り下げさせて頂きます・・」


踏みつけられて顔を歪ませながら、ぼろぼろ涙をこぼしている女の名前は藤崎綾子。小学校の教師をしながら、女手ひとつで一人娘の加奈子を育てている。事の起こりは、一週間前だった。白百合女子高等学院の生徒会長を務める加奈子が、学校からの帰り道、一人の高校生男子に襲われたのだ。危ういところで暴行未遂事件に終わり、警察に被害届を出した。だが、その高校生男子こそ、蛭ヶ谷市長である君嶋玲子の一人息子だったのだ。

君嶋玲子は君嶋財閥の娘で、その夫は国会議員そして自らは市長という超エリート階級の女であった。そんな彼女にとっては、世間体ばかりではなく溺愛する一人息子が警察沙汰に巻き込まれるなど、断じて許せない。玲子は自ら藤崎綾子の家を訪れ、権力を傘に、まるで猫が鼠をいたぶるよう綾子を責め立てているのだ。

「いいこと、このままなら私の力で、あなたを小学校教師の職から追放することだって簡単に出来るのよ!いいえ、それだけじゃないわ・・君嶋一族の力で、この蛭ヶ谷から叩きだして日本中どこに行っても仕事に就けないようにしてあげるわ!ふふふ・・・娘と二人でホームレスになって、野垂れ死にしたい?さぁどうするのっ!」

ヒステリックな声で怒鳴りつける玲子の剣幕に、綾子は震え上がる。

「わ、わかりましたわ・・被害届を取り下げれば宜しいのですね・・」

「それだけじゃないわよ!ちゃんと康介に謝って頂きたいの!」

綾子は唖然とした顔で、玲子の顔を見つめる。

「ど、どうしてお宅の息子さんに謝らなければいけませんの?だ、だってうちの娘が暴行されそうになったんですよ・・それなのに、な、何故・・」

「あら、そんな事は当たり前でしょ!康介の年頃なら女の子に興味を持つのが普通じゃない!ちょっとお付き合いしてみたかっただけに違いないわっ!それを暴行だなんて騒ぎ立てられて、うちの子がどんなにショックを受けたと思ってるのっ!ちゃんと詫びをして、きちんと責任とってちょうだいっ!」

玲子の叩きつけるような甲高い声が響き渡る。

(うぅっ・・・そ、そんな・・)

「どうするの、詫びるの詫びないの、どっちなのっ!」

玲子の生まれ持った弱い物をいたぶるエリートとしての威圧感は恐ろしいくらいだ。綾子は完全に屈服するしかなかった。

「わ、わかりましたわ・・お詫びすれば宜しいのですね・・」

「おほほ・・やっと分かって頂けたかしら・・誰だってホームレスにはなりたくないわよね!だったら誠意を見せて、今すぐ素っ裸で土下座して謝りなさい・・」

静かな口調の中に有無を言わさぬ威圧感が漂っていた。こうして綾子は泣き出しそうな気持ちを抑えて、すべての着衣を脱ぎ捨て玲子の前に、土下座しているのだ。
「うふふ・・康介に詫びるときも素っ裸でお詫びするのよ!それから今後は、あなたに康介の性欲処理をして頂くわ!」

「な、なんですって!それはどういう事ですのっ?」

「康介くらいの年齢が一番性欲が強い時期なのよ!試験勉強だって頑張らなきゃいけない時期なのに、性欲で悶々としなきゃなんないなんて可哀想じゃない!今度の一件も元はと言えばそれが原因みたいなものじゃないの。だからあなたが今回の責任をとって、康介の性欲処理を引き受けるのよ!わかって?」

「うぅっ・・そ、そんな理不尽な・・」

「あなたが嫌なら、娘の加奈子さんでも構わないのよ!白百合高等女学院の生徒会長が康介の性欲処理してくれるのも素敵じゃなくって?」

「ひ〜〜〜〜っ!そ、それだけはお許しくださいませぇええ〜っ!」

綾子は泣きながら玲子の足下にすがりつく。

「じゃ、あなたがやってくれるのね?それじゃ明日にでも康介に詫びを入れに来てちょうだい。もし来なかったら、どうなるかもう分かってるわよね?私はこの後予定が詰まってますから、この辺で失礼しますわ」

有無を言わせずさっさと立ち去る玲子を裸のまま玄関先まで見送りに出る綾子。玲子は泣きながら肩を震わせている綾子を振り返ると、さらに非情な言葉をかけるのだった。

「うふふ・・明日、お詫びに来る時は誠意の証も兼ねて、陰毛はツルツルに剃って来ていらしてね!これから康介の性欲処理するからには、母親としてあなたの性器は毎回チェックさせて頂きますわよ!」

(くぅ〜〜〜〜っ!)

綾子は、その場にしゃがみ込んで咽び泣いた。

(こぉちゃん・・計画通りに、また一匹あなたがお望みの牝豚をプレゼントできるわよ!ママはあなたが欲しい物はなんだって手に入れてあげる・・・)

玲子の脳裏に、康介の喜ぶ顔がありありと浮かんでくる。もう何人の女をこうして息子の性欲処理の為だけにあてがって来たことか・・息子の康介は異常性欲の持ち主だった。それも同じ年頃の女より、大人の女の熟れた肉体へおぞましい程の執着を抱いているのだ。玲子が初めて華道教室の師範だった36歳の女を息子にあてがったのは、康介が中学一年の時であった。愛する一人息子が喜ぶ事ならどんな事でもいとわず、欲しい物はなんでも与えるほど玲子は康介を溺愛しているのだ。そうしてどんなわがままも許し望んだ物はなんでも与えてくれる母親に育てられる中で、すでに高校3年となった康介の異常性欲はますます醜悪なまでに膨れあがっていた。
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