鄙びた町のあちらこちらに建っている、鼠色にくすんだ土蔵の白壁がこの町の歴史の古さを物語っている。
その中で一際大きな土蔵が人の目を引く2つの屋敷があった。この町で名家として名の通った黒川家と桜井家である。明治の時代からこの両家は、お互い犬猿の仲として競合しながら現在に至っていた。
野心家である黒川家の当主剛蔵は、長年に渡りあらゆる策謀を用いては桜井家の破滅を虎視眈々と狙っていたが、ついにその宿願が叶う時が訪れる。時代の趨勢は田舎町の旧家にも厳しく、桜井家は財政難に苦しんでいた。そこにつけ込んだ剛蔵の水面下の謀略により桜井家は一気に抜き差しならぬ状態へと追いつめられてゆく。
剛蔵は、担保として桜井家の夫人と二人の娘を黒川家で預かる事を条件に、桜井家への財政援助を申し出た。そして桜井家の当主は、苦渋の末に剛蔵の申し出を受け入れ妻と娘を黒川家に預ける決断をする。桜井家の再建を図り、もしそれが失敗に終わった時は家屋敷を売り払って、妻と娘たちを取り戻すつもりであった。また一方妻と娘たちも夫と父の苦境を救う為、進んで黒川家に身を寄せる覚悟を示したのである。
こうして剛蔵の黒い罠を知る由もなく、桜井家夫人の雅子と、娘の翔子、美穂の3人は黒川屋敷へ入っていく。そこで3人の桜井家の女たちに待っていたのは、残酷な運命だった。着衣はすべて脱がされて焼却されたあげく全裸で剛蔵らの前に立たされる。そして3人に告げられたのは強制的に黒川家の嫁となる事だった。
この物語はここから始まる。
序章