ここでは、私が日本牝豚のブローカーになるきっかけとなった思い出話を皆様に聞いて頂きたいと存じます。あれは私がまだ女学生の頃でした、夏休みを利用して田舎で暮らしている叔母の元へ初めて遊びに参りましたの。長い時間汽車に揺られて山間の小さな町に着きました頃には、もう町の通りに西日が射しておりました。鄙びた食堂や商店が並んだ、その通りには、どこか懐かしさを思わせる匂いが漂っていましたわ。そんな中に叔母の営む小さな店があったのです。叔母の商売が日本人種の牝豚売りである事は母から聞かされておりましたけど、初めて訪れた叔母の店先で軒下に吊された牝豚を見た時に何とも言えない妖しい心持ちになったのを今でも良く覚えているのでございます。
叔母は私に大変優しくしてくださって、牝豚売りの商売についても色々教えてくださいました。ちょうどその頃、叔母の店に母娘の牝豚が入荷されましたの。今と比べて当時は、母娘揃いの牝豚は滅多に仕入れる事が出来ない貴重なものでしたわ。叔母は顔を輝かせて牝豚の扱い方を私に見せてくださいました。そして私達中国やアジアの国々にとって、どれほど日本人が軽蔑すべき存在で、下等な人種であるかを教えてくださいましたの。




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鈴麗の回想