虻川市の中心街から外れた一角に、ソープランドやストリップ劇場のけばけばしい看板で彩られた遊楽街がある。煤けた飲食店や安宿が風俗店と軒を並べて小さなアーケード横町と云った風情である。その横町を通り抜けると、そこからは街灯も疎らな寂しい空き地が続き、その先には小さな零細工場が固まって黒く煤けた煙突から煙りを吐いている。この辺りは昼間でも工事現場のダンプカーや工場のトラックが土埃をあげて往来するくらいだ。その空き地に、廃材やトタン板で作られた粗末な襤褸小屋が立ち並ぶ一隅がある。それが虻川市公認のC級街娼地区なのだ。
日も暮れて夜の帳が降りる頃、あちらこちらで闇の中に浮かび上がる女の白い裸体が客を誘って淫らに蠢いている。昼間は人気のないこの場所も夜になると、汚れた作業着を纏った労働者たちが安い女肉を求めて群がってくるのだ。汗と埃で異様な体臭を放つ男たちを
媚びの限りを尽くして奪い合う女の姿は、どこかこの世の物とは思えぬ凄絶な艶めかしさを醸し出しているのである。
女達がもじもじと恥ずかしげに客を誘っていられるのも最初だけだった。日に日に女の数が増えて今では20人近い女がいるのだ。厳しい娼婦税を考えると死に物狂いで客を取らねば生きていけないのである。やがてどの女も男を誘う淫らな仕草を覚え、一人でも多く客を取るために、誰よりも恥知らずに腰をくねらせ始めるのだった。そうして客を捕まえると小屋に引き込み飢えた男達に襤褸布のように抱かれるのだ。小屋が塞がっている時は、まるで犬猫の交尾のように路上や草の生えた地面の上で交わって金を受け取るのである。
客の中には労働者ばかりではなく、顔役連中の息のかかったちんぴら達もやって来る。彼らにはC級娼婦はタダで好きな時に、いくらでも抱ける許可が与えられているのである。こんなちんぴら共に抱かれる女は、貴重な時間を無料奉仕に費やさねばならぬ辛さに泣きながら尻をふるのだ。
C級街娼地区