嗚咽を押し殺しながら、由美子は虻川市助役の男根にちろちろと柔らかな舌先を這わせていた。助役の溝口は由美子に口唇奉仕させながら、非情なる虻川市の政策を伝えているのだ。岩淵を始めとする虻川市の顔役たちのかねての計画がいよいよ実行に移される時が来たのである。

「率直に言うとだね、現在の援助は一切打ち切られるんだよ。宮下君の場合はこれまで貸し与えていたアパートからも出て行ってもらう事になるね。そうそう市役所の仕事も辞めてもらう事になるから、そのつもりでいたまえ!」

残酷な話を、さも何事でもないように話す溝口に、由美子は取り縋るように悲痛な声で訴える。

「そ、そんな事って・・あなた方は私たちに・・死ねとおっしゃるんですか!」

「ふふふ・・・まぁ落ち着きたまえ!君たちが生きていく道は、ちゃんと用意してあるんだよ。これから君たちは虻川市公認の娼婦としてのみ存在が認められるんだ!今までのように我々だけの隠れ娼婦としてではなく、誰に遠慮無く堂々と娼婦として生きていけるのさ!こうして自立の道を与えてやるんだから、ちっとは感謝したらどうかね宮下君?くくく・・・」

身の毛のよだつ溝口の話に、由美子は鳥肌を立てて震えだした。

「あぁ・・な、なんてむごいことを・・」

「おい!舌を休ませるんじゃない!しっかりしゃぶりながら話を聞くんだよ!」

溝口は由美子の髪を掴むと無理矢理怒張した男根を頬張らせる。

「うぐぅ〜〜っ!」

「ひひひ・・宮下君、君は娼婦なんだから、どんな時でも客に奉仕するのを忘れちゃいかんよ。話はまだ終わってないからねぇ、ひひひ・・今後この街で娼婦として生きていく為には、市に娼婦登録をしないといけないんだ。登録にはA級からC級までのランクがあってね、年齢や資産その他色んな要素を考慮してランク付けの判断をする事になっているんだが、例えば宮下君と同じ位の年齢で自分の家を持っているとすると、B級娼婦登録証が発行される。B級娼婦は市が斡旋した客に自宅を使って体を売ってもらう事になるんだが、君の場合は家が無いからC級娼婦にならざるを得んねぇ、くくく・・今後君たち母娘は市が指定したC級娼婦地区に移住して、そこでは自ら客を取って生きていかねばならぬのさ!」

嫌味を交えて語る溝口の話を由美子は気が遠くなる思いで聞いていた。そしてその時悟ったのだ。岩淵が娘の事を尋ねた理由を・・

「ひ〜〜〜〜っ・・・ま、まさか、娘の智恵も娼婦にしろとおっしゃるのでは?」

由美子は弾かれたように、溝口の股間から顔を離して絶叫した。

「くくく・・・それは当然の事じゃないかね宮下君?いいかね、公認娼婦になれば市の方に娼婦税を納めなければならないのだよ、それはランクに関係なく娼婦としての稼ぎの90%を毎月徴収されるんだ。B級娼婦ですら料金の上限が¥6000までと定められているんだから、仮に一日5人の客を取ったとしても¥3000以下しか手元に残らない計算だよ。母娘二人が最低限の生活するにも、ぎりぎりの金額じゃないかね?娘がいれば当然二人して体を売らなければ、とても人としての暮らしはできないさ。まして君のようなC級娼婦の場合は料金上限が¥3000だ!10人客を取って¥3000になるかならぬかじゃ、娘と二人で体を売らねば生きてすらいけないんだよ!娘を娼婦にしたくないなんて贅沢が許されるのはA級娼婦だけだってのを覚えておくんだね・・・ひひひ・・」

(くぅぅ〜〜〜っ、そ、それじゃ地獄だわぁ〜っ!)

「おい!奉仕するのを忘れるなと、さっき言ったばかりだろうが!」

役所内では仮面の下に隠し潜めている獣性を露わに剥き出して溝口が怒鳴りつけると、おびえたようにぴくっと体を震わせた由美子の唇が、青筋を浮き出させて怒張する溝口の男根を包み込んだ。ぐいぐいと頭を押さえ込まれ喉の奥まで喰わえ込まされる。

「ぐぇ〜〜っ!」

溝口の男根を喰わえた由美子の唇の隙間から、込み上げた黄色い胃液がどろどろと溢れ落ちた。ぼろぼろと由美子の目から涙が伝う。

「ふふふ・・・それでどうなのかね?この話を受け入れるのか、娘と二人で野垂れ死ぬか、返事を聞かせたまえ、宮下君?」

溝口は、そう言って由美子の髪を鷲掴みにして引き上げると苦渋に歪んだ由美子の顔を、にたにたと笑いながら覗き込むのだ。由美子にはもう娘と共に地獄に堕ちる道しか残ってはいなかった。智恵は母思いの優しい娘である。この話を聞けば、きっと黙って母について来てくれるのは分かっている。それだけに由美子の胸中は張り裂けんばかりに痛むのだ。

「お、おっしゃる通りにさせて頂きます・・」

血を吐くような思いだった。晒しあげられた由美子の顔からは血の気が失せ、ランプの灯りに浮き上がる、その白い顔は悲愴を湛えている。それは、闇のように捕らえどころのない黒い権力を前に、ひざまずくしか術のない哀しい女の美しいまでに凄絶な面差しであった。

「うひひ・・そうか、その言葉を聞いて私も安心したよ。市長もさぞかし喜ばれる事だろう。では明日になったら娘を連れて市役所振興課の窓口に行き娼婦登録の申請をしたまえ!娘の学校の退学手続きは市の方で済ませてやるから心配はいらんよ、分かったかね?宮下君!」

それから間もなく、由美子の口内に溝口の精液がほとばしった。唇を締め付け最後の一滴まで漏らさぬよう搾り取り、ごくりと飲み下す由美子。絶望の味を噛みしめながら由美子の舌先は、精液の残りかすを求めて、ちろちろと裏筋から亀頭を這い回る。由美子の顔を照らすランプの灯りが、一陣のすきま風に、ぐらりと揺らめいた。

非情なる計画



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