最終章 旅路の果て
秋風が立つ季節が来た。広壮な剛蔵の邸内の紅葉も、いちだんと鮮やかである。落ち葉の散る小径を、真っ白い豊満な女体が、リードを取られて這い進んでいくのが見えた。牝は妊娠しているらしく、動きも大儀そうであった。しかし、リードをつかんだ背後の飼育係の目を愉しませるかのように、臀を左右に振りたてている。ヒップを左右に振るだけでなく、前後にもグラインドさせて性器を強調するようなポオズを取り、ときおり、首をねじ向け、媚びと懼れの入り交じった眼差しで、おずおずと背後の男の方を振り返る。すっかり牝としての仕草、振る舞いが身についた千絵の姿であった。牝がすでに発情しているのは明らかであった。膣からねっとりと白い汁が滲み出ているのだ。
「良治さま、あの・・・・・」
千絵は、そっと後ろに顔をねじ向け、臀を振りながら、チンピラにおずおずと声をかけた。
「ん?どうした、千絵?」
「は、はい・・・・ おまんこ牝の千絵、お、おしっこしたいの・・・ねぇっ、い、いいでしょ?おねがい、良治さま、」
「小便か?」
「お願いですぅっ、も、洩れちゃいそうなの・・・」
そう言いながら、千絵は、せつなげにメロンのような丸い乳房を両手で抱きしめ、訴えるような眼差しで、良治を見つめる。 愁いに満ちた美しい年増の牝畜の瞳は潤み、乳首が硬くとがって、飛び出している。
「へへへへ、千絵、ここは駄目だぜ。ここは、昨日めぐみがマーキングしたとこじゃねーか。縄張りを荒らしちゃいけねーなー」
「うっん、い、意地悪、そ、そんなこと、おっしゃっちゃ嫌よ、嫌っ・・・」
「へへへ、所構わず垂れ流すってか。え、千絵!」
「そ、そうよ、牝ですもの・・・・お、お気に召さないなら、お、お仕置きしてもいいわ。で、でも、お仕置きは、おしっこの後で、ね、い、いいでしょ?良治さま・・・」
千絵はからだをピッタリと良治に寄せて、揺れる乳房をせつなげにすりつけて甘えた。気品に溢れたセレブな女性、決して手の届くはずもなかった美しい年上の女が、今や性処理用の肉奴隷に変貌している。なりふり構わず性器を剥き出して、排泄をねだる牝そのものなのだ。そんな転落に手を貸したことを思うと、さすがの良治も、胸を締め付けるような悔恨の思いがこみあげ、泣きたいようなせつない気持ちに駆られるのであった。もう、二度と、あの優美で凛とした、貴婦人の姿を見ることはできないのだ。
(あぁ、俺はとりかえしのつかないことをしてしまったのだろうか?)
良治は、思わず千絵を抱きしめ、唇を奪った。千絵はくくぅっ、と泣き声をあげて、良治にしがみついてきた。
「スキよ、良治さま、スキ・・・牝の千絵、も、もう、良治さまに夢中なの・・・」
「よし、じゃここで済ませるんだ!」
「は、はい・・・あ、ありがとうございますぅっ・・・う、うれしいわ・・・おまんこ牝の千絵、う、うれしいわ・・・・」
そのまま高く左脚を青空に向かって高く突きだし、良治の前にアナルから性器を丸出しにする。
「そ、そんな傍にいらしたら、し、飛沫がか、かかちゃいますぅっ・・・」
「いいんだよ、千絵。伸び伸びと済ませな。ちゃんと後始末してやるからな。」
自分でも驚くほど優しい声音であった。
「は、はい・・・」
うっと、声をあげると、ブルブル、と白い太腿が震え、一条の白い線が、勢いよく千絵の股間から迸りはじめた。良治は、ぴったりと寄り添い、優しさをこめて、放尿する牝の丸い臀を撫で上げながら、観察する。胸の内は千絵に対する愛しい気持ちで一杯だった。放尿を終えた後、良治は千絵から以前とりあげたパンティを取り出した。折りに付けては、取り出して拡げて眺め、嗅ぎ、舐めて満たされぬ思いのたけをこめて、自ら慰めることも多かった。白い肌着は、すでに残り香も消えて、薄汚れてきていた。良治はその布片でそっと股間を拭ってやる。
「あぁっ、りょ、良治さまっ・・・良治さまっ・・・」
千絵も感極まった声をあげた。
「おいおい、良治、ナーニやってんだ。あんまり牝を甘やかすなって、信代姐さんにいわれてるんだろうが、え」
突然、声をかけられ、良治はビクッとさせた。政夫もまた、牝を散歩させながら、築山の方から近づいてきたのだ。臨月で、出産も近いめぐみである。
「おっと、いけねえ、兄貴、オレとしたことが、へへへ・・・」
慌てて千絵から躰を離すと、良治は頭を掻いたが、心の内を読まれたのではないかと、内心どぎまぎしている。政夫は傍の石灯籠にめぐみを繋ぎながら言った。
「社長がお呼びだぜ。」
母娘を繋ぐと、その場に取り残して、二人は足早に屋敷に足を向ける。何ヶ月ぶりの再会であった。
「お、おかあさま、・・・」
「め、めぐみちゃん・・・げ、元気だったのね・・・」
二人は抱き合い、嗚咽した。なかなかそれ以上言葉が出てこない。
「おかあさま、つ、遂に、に、妊娠してしまったのね・・・ご、ごめんなさいっ、ほ、本当にごめんなさい・・・」
めぐみは泣き出した。そんな娘の肩を抱いて、千絵も泣きながら答えた。
「謝らなければいけないのはママのほうよ。ママが悪いの。ママ、とうとうめぐみを守ってあげられなかったんですもの・・当然の報いよ・・・」
「お、おかあさま、も、もういいの・・・・もう、あたしたち、売られることはないのよ・・・・」
めぐみは辺りを窺うと、そっと母の耳元に囁いた。千絵は目を瞠った。
「ほ、ほんとう?本当なの?お腹の赤ちゃんは、・・・」
「そうなの、旦那さまの子だわ・・・・旦那さまにとって、初めての赤ちゃんなの・・・旦那さま、喜んでおられるの・・・・おかあさま、あたしたち、勝ったの・・・・最後に信代さまに勝ったのよ・・・」
「そ、それじゃ、・・・・それじゃ・・・・」
「おかあさま、も、もう何も言わないで、うまくいくわ・・・きっとうまくいくわ・・・」
夕陽が落ちかかり、黄昏れてきた。淡い薄闇の中に浮かびあがる二人のシルエットは、いつまでも動かなかった。
(完)
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