第20章 色懺悔






 色懺悔 日中でも陽の入らない、薄暗い地下の檻に、千絵は、一人きりで繋がれていた。娘のめぐみと切り離されて、すでに数日経っている。 

(もしかして、娘は、もう売られてしまったのでは・・・) 

不安と恐怖で、千絵は気が狂いそうだった。 

(まさか、まさか・・・・そ、そんなことは、ないわ・・・銀次さま、約束してくださったのよ・・・あたしたち母娘が妊娠すれば、肉市場行きは許して下さるって・・・・あぁ、そ、それとも、娘は、も、もう妊娠してしまったのかしら?)

胸中をよぎる疑心暗鬼に、居ても立ってもいられない千絵であった。夜も眠れなかった。しかし、なぜか信代たちはいっさいそのことに触れなかった。あの恐ろしい種付けショウの後も、相変わらず、牝のつとめを休ませてもらえることはなかった。苛酷で淫猥な調教も、続行されていたのである。 地下に見回りに下りてくる信代に娘がどうしているのか教えて欲しいと、泣きながら、千絵はすがった。 

「そんなこと、お前がいちいち、口を出すことはないんだよ、千絵、」 

「そ、そんな、お、おねがいですっ・・・・お、お慈悲ですっ・・・」
 
「娘に遭いたいのかい?」 

「は、はい・・・お、お願いしますっ・・・うぅっ、お願いしますぅっ・・・・の、信代さまぁっ、おねがいっ・・・」

無言のまま、額を床にこすりつけて必死で哀願する美女の白い裸身を心地よげにしばらく眺めていたが、ようやく信代は口をひらいた。 

「おまえがそんなに言うのなら、教えてやらないこともないんだ
よ。ただねぇ・・・・」 

千絵は、おどおどと信代の顔を見つめる。どんな無理難題でも受け入れる気持ちであった。 

「めぐみは、もうお前には遭いたくないって言ってるんだ
よ。」 

「そ、そんなっ、う、嘘ですっ・・・」 

「あたしが嘘つきだっていうのかい?」 

ギラリ、と信代の眼が光った。まっ青になって唇をふるわせる千絵。信代の恐ろしさは創造に絶していた。 

「そ、そんな積もりでは・・・け、けっして・・・」 

「フン・・・・まあ、いいさね。」 

千絵の怯えと不安を心地よげに眺めながら、信代はわざと焦らす。 

「ど、どんなことでも、い、いたします・・・お、おねがいっ、お願いですっ・・・・娘に、あ、遭わせてくださいまし・・・」 

「そんなこと言われたってねぇ、」 

腕を組み、考えこむような恰好で、信代は牝の不安を愉しんでいる。 

「それじゃ、ひとつ骨折ってみようかね、ただし・・・」 

「ただし?・・・・」 

千絵は、信代の次の言葉を待った。 信代はなかなか口を開かない。 不安な面持ちで、千絵はおどおどと信代の顔色を窺う。また、女にとって死ぬほど辛い無理難題を持ち出されることは予感できた。
 
「千絵、お前、牝としてのつとめぶりが十分だと思ってるかい?」 

信代はいきなり話の方向を変えてきた。 

「め、滅相もないです・・・千絵、牝としてまだまだ、修業中の身ですもの・・・・」  

「そうかい、そうかい・・・じゃー、なんだね?、ご奉仕の後も、反省しなきゃならないことも、いっぱいあるってことだね?え、そうなんだね?」
 
「は、はい、信代さまの、お、おっしゃる通りです・・・・」 

不安な面持ちで、次第に信代の口車に乗せられ、罠にはめられていく哀しさに、千絵は震えた。 

「じゃ、お仕置きされたって、仕方ないような落ち度もあるってことだね。」 

駄目を押すように、信代は訊ねる。 

「そ、そうですわ・・・信代さまの、おっしゃる通りです・・・」 

震えながら応えると、信代はにんまり笑った。 

「それを聞いて、あたしも安心したよ。牝どもの落ち度をいちいち調べ立てて、仕置きにかけるのも面倒でねぇ、第一、あたしが旦那さまにご奉仕してるわけじゃないしね。やはり、ここは実際に牝ども自身が自発的に申し出るのが筋じゃないかと思うんだよ、え、違うかい?」 

千絵はブルブル全身をふるわせている。逃れることのできない恐ろしい展開になるのが分かる。 

「それでね、牝どもが反省して懺悔する機会を与えてやろうと思うんだよ。どうだろうね。千絵!お前も、進んでお詫びして、お仕置きをねだるべきじゃないかしらね。え?そうじゃないかい?」 

「は、はい・・・・」 

「黙ってちゃ、分かんないだろ、え、千絵、それとも何かい?反省することなんか、何ひとつないとでも言うのかい?」 

信代の声が甲走ってきた。眼が吊り上がって、ピクピクと頬の筋肉が痙攣する。千絵はビクッとからだをさせると、泣く泣く応えた。 

「め、滅相もないです・・・す、すてきな機、機会を、く、くださり、あ、ありがとうご、ございます・・・・こ、これから、お、おつとめぶりのことを、ざ、懺悔させてくださいませっ・・・」

「よし、それじゃ午後のご奉仕まで、時間をあげるからね。じっくり思い出して、反省すべきことをよっく思い出しておくんだよ。娘に会えるかどうかも、それ如何だよ。」 

決めつけるように言い放つと、信代は足音高く、地下の階段を上がっていった。




       *********************** 


 

千絵が呼び出されたのは、午後も陽が傾きかかった頃であった。 いつものように、首輪にリードを引かれて、千絵は廊下を這い進む。目の前を這い進む年上の美しい牝の白いむっちりと張った臀丘の揺れを、背後から愉しむ。 

「へへへへ・・・・しっかり詫びを入れるんだぜ、千絵!心から詫びて潔く仕置きを受けたいってねだるんだ。いいな!」 

もはやすっかり主人気取りで、良治はそう教示する。 

「社長、千絵を連れて参りやした。」 

「うむ、入れ!」 

中から剛蔵の野太い声が応える。 すでに中では牝たちの涙ながらの告白が始まっているようだ。よほど辛い責めを受けているのだろう。引き攣った声で、詫びの言葉をくりかえしている。剛蔵の執務室から外に広く張り出したベランダは、ふだんは瀟洒なチェアとテーブルが置かれているが、今はすべて取り払われて、大きな白木のテーブルがひとつあるだけである。 異様な牝の声はそこから響いてきたのだ。 テーブルの上には、真っ白い女体が仰向けで大の字に引き据えられている。 下肢をいっぱいに拡げられた上、腰を高く上げさせられて性器を剥き出しにされた美しい牝が、頬を引き攣らせ、昂ぶった声で、肉交のつとめのときの反省を強いられているのだ。 白く輝く裸身のあちこちには、陵辱された痕も生々しく、赤く噛み疵やキスマーク、爪痕や鞭痕が点々と残り、牝のつとめの激しさを物語っている。 

「そ、それと、夜のめ、めんどり遊びの、と、途中で、・・・お××こ牝の紗代、し、失神してしまい、お、お客様の興をそ、削いでし、しまいました・・・」 

辛さと哀しみで、牝の頬は紅潮し、白いからだは仕置きを恐れて、小刻みにふるえている。 

「紗代!声が小さい、最初からやり直し!」 

ビリッ、と音がして、女体がビクン、と上体を反り返り痙攣する。信代の手にした電気鞭が牝の太腿に触れたのだ。 

「ひぃぃーっ、ご、ごめんなさいっ・・・お、おゆるしをっ・・・紗代のお××このおつとめの、回数が、す、少なすぎました・・・お、お××このおねだりが、十、十分でなかったの・・・そ、それから・・・・」 

テーブルの脇には、数人の牝が順番を待って、控えている。どの牝も怯えきった表情だ。何人も何人もの牝奴隷の、血の吐くような淫猥な詫びの言葉と折檻による悲鳴が続いた。どれぐらい時間が経ったのだろう。ようやく、千絵の番になった。良治は千絵の腰から容赦なくバタフライを剥ぎ取ると、テーブルの上におしあげる。 屈強なヤクザが三人、一
人が千絵の両腕をつかんで、頭の上に引き伸ばし、あとの二人が千絵の左右の下肢をいっぱいにひろげて引き据える。 

「あっ、あぁっ・・・あぁぁっ・・・・」 

千絵はあえぐ。 

「千絵、おまえ、どういう粗相をしたと思うんだい?正直に言ってごらん!」 

信代が笑いながら、訊いた。 

「は、はいっ・・・お、お××こスレイブの千絵のい、いけなかったことは・・・あ、あのうっ・・・・からだのお、おつとめの回、回数が、少なかったこ、ことです・・・め、牝は、一日30発は、あ、あそんでい、いただかなきゃいけなかったの・・・・」 

「どうして、そんなに少ないんだね?」 

「千絵の、千絵の、お、色気が十分で、な、なかったからだと思うの・・・もっと、心をこめて、お××このおねだりをしなかったからですぅっ・・・」 

「それだけかい?」 

「ア、アクメの回数も、す、少なかったです・・・あ、あの・・・い、いくときの声も、ち、小さかったんじゃないかしら?・・・」 

真っ赤になって千絵は応える。反省材料など思いつくはずもない。最初から無理難題なのだ。 

「それ以外は?」 

「は、はい・・・」 

千絵は絶句した。
 
(こ、これ以上、な、何を言えばいいっていうの?・・・・いったい何を自分に言わせたいの?) 

「千絵!お前たち母娘が庭先で男たちに、あそんでもらったときのこと覚えているかい?」 

「は、はい・・・」 

「そのとき、捕えられる前に、バタフライを外したかい?」 

「は、はい・・・千絵、お、お姿を見て、す、すぐに、お××こ隠しを取って、お声をかけました・・・」 

「それだけかい?」 

「・・・・・」 

「千絵、おまえ、肝心なこと忘れてないのかい?」 

千絵は怯えきった眼をおどおどと信代に向ける。 

「分からないのかい?」 

「は、はい・・・お、教えてく、くださいまし・・・」 

「とぼけるんじゃないよ!」 

いきなり信代は感情を爆発させた。千絵の頬を左右に張ると、髪の毛をつかんで揺さぶる。 

「ひぃっ・・・・お、おゆるしをっ・・・」 

「千絵、お前たち、沢田に見つからなければ、こそこそ牢にもどる魂胆だったんだろうが!え、お前の考えてることことなんぞ、こちとらはお見通しだよ!」 

あれは一月以上も前のことなのだ。専務の沢田の奸計にはめられて、バタフライをなくしたときのことだ。しかし、その仕置きはすでに終わっているはずなのだ。 

「千絵、お前バタフライを失くして、仕置きされたんだろ、え、」 

「は、はい・・あ、あたくしの、不、不注意で、お、お××こ隠しを失くしました。も、申しわけあ、ありませんでした・・・」 

「千絵、あたしはそのことを責めてるんじゃないよ。お××こ隠しをなくした牝が、どういう仕置きを受けなければならないのか、言ってご覧!」 

「は、はい、め、牝が、お××こ隠しを失くした罰は、お、お××こ打ち30発です・・・」 

「そうだろ!沢田は20発しか打ってないと言ってるよ。沢田が嘘を吐いたのかい?え」 

千絵は、必死であの時のことを思い出そうとした。 

「どうなんだい?え、千絵!」 

「仕置きの回数を誤魔化したとなったら、そいつは牝にあるまじきことだな。」 

剛蔵が口を挟む。 

「まったく、この子たちと来たら、こちらがちょっとでも甘い顔を見せればすぐにつけあがるんですからねぇ。やはり市場で売り飛ばすしかないですかねぇ。」 

「だ、だんなさまっ、の、信代さまっ・・・・」 

千絵は泣き出した。 

「お、お××こ打ちの回数を、ま、間違えたのは、千、千絵のお、落ち度ですっ・・・うぅっ、ご、誤魔化すなんて、め、滅相もないですぅっ・・・」 

「それだけじゃないよ。千絵!」  

千絵は泣き濡れた顔を剛蔵と信代に向けた。 

「千絵、忘れたわけじゃないよね。お前、種付けショウで、娘ともども孕んで見せるって、あたしたちに豪語したんじゃなかったのかい?」 

「そ、それは・・・」 

「それがいまだに月経が続いているところを見ると、孕む気持ちがないとみたが違うかい。お前みたいなたちの悪い牝は即刻肉市場送りなんだよ。」 

「ひッ・・・・」 

「信代、こういう場合、牝にはどんな仕置きをしたらいいかな?」 

剛蔵がのっそり言う。 

「そうですわねぇ、まず、つとめの際の粗相に対しての仕置きとして、臀打ち10発、それから、打ち残したお××こ打ちが10発、それから回数を誤魔化したことについては、××こ打ち20発でしょうかねぇ。それから、ここに穴を通して、一晩、醤油瓶をぶら下げさせて放置したら、どうでしょうかね。」 

信代は千絵の乳首をつまんで、弄り回しながらいう。 

「ど、どうかっ、どうかぁっ・・・お、お慈悲ですっ、お慈悲ですっ・・・・あぁっ、か、かんにんっ・・・・」 

ヤクザの一人が、竹製のしなる鞭で、仕置きの準備よろしく千絵の性器からあなるにかけてなぞり始めると、千絵は、狂ったように泣きさけんで、許しを乞うた。 

「千絵、お前、孕んで見せるって言ったのは忘れてないな?」 

剛蔵は訊ねた。藁をもつかむ思いで、千絵はその言葉にしがみつく。 

「う、嘘じゃありませんっ・・・は、孕みますっ、千絵、孕みますっ・・・・もう一度、もう一度、チャンスをく、くださいまし・・・うぅっ、おねがいっ・・・」 

「どうします?社長、いちいち牝の言うことをとりあげてたら、埒があきませんわ。この際、きっちり仕置きにかけて、肉市場に出したらどうでしょう?」 

「うむ・・・・」 

信代の言葉には矛盾がある。これだけの仕置きにかければ、商品価値が下がってしまう。しかし、半狂乱になっている千絵には、気がつく道理もなかった。 剛蔵はぐい、と顎をしゃくった。千絵の手足をおさえつけていたヤクザたちが手を離し、千絵は剛蔵の前に転がった。ヤクザたちは一礼して、立ち去る。 

「うむ、千絵、今の言葉に違いはないな!」 

「は、はい・・・」 

剛蔵と信代の前にひれ伏して、啜り泣いている牝はかすれた声で応える。 

「ただし、千絵、条件つきだぞ!」  

剛蔵は薄気味悪い笑みを浮かべながら、言葉を継いだ。 

「いいか。千絵、よっく聞くんだ。めぐみは孕んだぞ。分かるか?今じゃ、お前とは身分が違うんだ。」 

「は、はい・・・」 

(ああ、やはりそうだったのだ。娘は、とうとうこの人たちの手で、妊娠させられてしまったのだ。母娘が引き離されたのも、それを千絵に知らせるのをわざと遅らせるためだったのだ。) 

千絵は今更ながら、悪魔たちの底なしの悪意にふるえた。 

「これからは、娘と考えるんじゃない、千絵。奥様と呼ぶんだ。」 

「は、はい・・・」 

「奥様はね、腹ボテの身を押して、牝のお前が孕むよう、種付けの指導をして下さるのさ。え、嬉しいだろ?」 

信代が言葉をはさむ。 ワナワナ全身をふるわせながらも、千絵は頷かざるを得なかった。 

「は、はいっ・・・・あ、ありがとうございますっ・・・・ありがとうございますっ・・・」 

「しっかり、めぐみの指図にしたがって、孕むんだ、いいな!千絵、今度ドジを踏んだら、母娘ともども肉市場行きだぞ。分かったな!」 

轟然と、剛蔵は宣告した。 衝撃のあまり、千絵の意識は遠のいていった。






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