哀愁への旅路 




                          第一章 発 端





 家事をひととおり終えた頃、リビングの電話が鳴った。

「高山千絵だね?」

声を聞いたとたん、千絵はひっ、と息をのんだ。悪夢のような数日前のことが甦ってきた。愛する
夫が飛行機事故で亡くなってから三年。やむを得ず引き継いだ夫の会社の経営の仕事は、世間
知らずの千絵にとっては無防備そのものであった。たちまち、事業は行き詰まり、借金の山となっ
た。家も土地も二重三重に抵当に入り、利子の支払だけでも精一杯。そんな窮状につけこんだよう
に現われた黒羽興業の社長、黒羽剛蔵であった。取引の世界で、海千山千の剛蔵の魔手に落ち
るのは時間の問題でしかなかったのである。剛蔵はあこぎな商売でのし上がってきた成金であっ
たが、裏では闇組織や、中国系マフィアともつながっているとの噂のある油ぎった五〇代の男であ
る。背が低く、肥満してテラテラと禿げ上がった剛蔵は、朝から生肉を口にするほどの精力絶倫で、
全身から精気を漂わせており、見るからに酷薄で強欲な高利貸しそのものである。女と見れば、ぎ
らぎらした視線を舐めるように投げかけ、狙った女は必ず、牝奴隷として手に入れるという偏執狂
である。たまたま、舎弟として社に出入りしている良治から、クラスメートのめぐみとその美貌の母
の話を聞いており、食指が動いていた。

ある時、ホテルのレストランで、友人たちと談笑しながら食事を摂っている千絵の姿を見て、剛蔵は
久々に痺れたような感じを覚えたのである。人妻らしいしっとりした気品と、都会的なあか抜けた夫
人の美貌は際だっていた。清純で、可憐な美少女であるめぐみとは対照的に、夫人の愁いを帯びた
優美な横顔といい、黒目がちの美しい大きな瞳といい、ほっそりしたきゃしゃな身体といい、剛蔵の
住む世界とは全く別世界の存在であった。



狙った女は必ず自分の牝にする。剛蔵は愛人になれば、債務を引き受けようとの申し出た。千絵は
見るからに下卑た、がらの悪い剛蔵に声をかけられたときは、肌に粟がたつほどのおぞましさに身
震いした。

 こんな男のオモチャになるなんて・・・

想像するだけでも、怖ろしさ、おぞましさに気が遠くなるような思いであった。しかし、年端もいか
ぬ娘を抱えた千絵には受け入れる以外に道は残されていない。泣く泣く、妾になることを承諾せ
ざるを得なかった。そんな母の窮状を知ってか、娘のめぐみは、決して不平や不満を顔に出さず、
母が剛蔵に呼び出される日は、思い詰めたような哀しげな表情で母を送るのであった。剛蔵のし
つこく、手荒な責めに、千絵は何度となく悶絶し、失神をくりかえした。肉のつとめは辛く、哀しか
った。すでに何度も弄ばれているにもかかわらず、剛蔵は恐ろしく、千絵は呼び出されるたびに、
身が竦む思いである。しかし、香港出張のため、しばらく剛蔵の呼出がないまま、平穏な母娘の
生活が戻っていた矢先の電話であった。


 電話の主は富坂信代という痩せぎすの中年の女であった。表向きは赤坂の料亭の女将である
が、剛蔵の意を受けて、牝奴隷の調教を請け負っている鬼のような残忍なサディストである。細く
つり上がった両眼を残忍に光らせ、次々と女にとって恐ろしい責めや仕置きを考えついては、実
行する。その怖ろしさ、不気味さに、牝奴隷たちは、火のように信代を怖れ、その前では視線を
合わせることすらできないほどであった。千絵の胸が激しく動悸をうちはじめた。全身がワナワナ
と震えてとまらない。先日の肉のつとめの記憶が生々しく脳裏に甦ってくる。信代はそんな千絵
の怯えを見透かしたように、受話器の向こう側で薄く笑った。

「千絵、旦那さまがまた、お前のよがり泣きを愉しみたいそうだよ。きっかり一時間後に行くか
らね。すっ裸でお出迎えするんだ。わかったね!」

情け容赦なく信代は千絵に命じた。千絵は、ひぃっ、と泣き声をあげ、必死で哀願をはじめた。

「きょ、今日は堪忍してッ・・そ、それに家には娘がいるんです・・・」

しかし鬼のような信代に千絵の哀願が聞き届かれる筈もない。

しばらく不気味な沈黙の後、信代の口にしたことばは、千絵を凍りつかせるに十分であった。

「めぐみといったね。たしか今年、中学三年になったばかりだね。そりゃ好都合だわ。その娘も
一緒にすっ裸になって、玄関に旦那さまを出迎えさせな!母娘どんぶりでオモチャにできるんな
ら旦那さまもご満足だよ。」

千絵は全身の血が逆流した。一瞬、目の前が真っ白になった。無駄な哀訴であったどころか、か
えってヤブ蛇になってしまったからだ。

「そ、そんなッ・・・イ、イヤァッ・・む、娘はまだ、子供なんですッ・・」

「何言ってんだい!蕾が開きかかってるのを、無理矢理散らすのが、面白いんじゃないか。だん
な様としても、娘の絶叫と抵抗を愉しみながら初物を味わえれば、きっとご満足だよ。そうだ、こう
しようじゃないか。え、玄関でお前たち母娘二人ですっ裸で土下座したまま、旦那さまをお待ちす
るんだよ。旦那さまが入ってこられたら、お前たち母娘がにっこり笑いかけて、同時に股をひろげ
てご挨拶するのさ。母娘でのからだの品評会をしていただき、膣穴の形とか大きさなんかを見比
べられ、それから、その場でめぐみは水揚げされて、旦那さま専用の淫売奴隷になるのさ。」

信代はあざ笑った。千絵は目の前が真っ暗になった。

「い、いやぁッ・・・そ、そんなッ、む、娘ばかりは、ゆ、許してッ・・・ど、どうか、わたくしが、い、
一生懸命、励みますますから、ど、どんなことでもします、どうか、どうかぁッ・・」

泣きながら千絵は哀願した。

「千絵、旦那さまの前では、メスはどんなふうに色っぽく股を拡げて、性交をおねだりしなければ
ならないのか、母親のお前が娘の前で実践してみせて、娘にメスの心得を教えるんだ!」

「ひぃぃッ・・・そ、そんなッ、あ、あんまりですッ・・・ど、どうか、堪忍してッ・・・・・」

「メスの分際で口応えしようていうのかい!それなら、うちの若い者たちにめぐみを輪姦させて
もいいんだよ。言っておくが、連中のなぶり者になって処女を失ったならば、その後は娘は闇ソー
プに売り飛ばすことになるよ!」

信代はあざ笑った。

「ひぃぃッ・・・そ、そんなぁッ、・・・ど、どうか、堪忍してッ・・・・・」

「それも面白いかもしれないね。三日三晩休みなしにぶっつづけで若い連中に姦られてオモチャ
にされたあげく、メス奴隷市場に母娘もろとも売り飛ばされるというのも」

「そ、そんなッ・・・ゆ、ゆるしてッ、・・・」

「いっとくが、めぐみはただのソープ女じゃないよ。ヤクザ達の慰みもの専用の肉奴隷さ。処女膜
を蹴破られて、膜なし女になった後は、肉奴隷として飼育されることになるのさ。連日連夜、若いヤ
クザ連中にひっきりなしに殴られ、輪姦されながら、仕込んでやるからね。めぐみは一時も男なしで
はいられないさかりについた牝ブタになるんだよ。調教完了後は、牝奴隷は肉市場に売り飛ばされ
るのさ。そうしたら、昼間は、秘密ショウに出て、尻の穴や陰門でバナナや竹輪を咥えて、切り落と
したり、筆を挟んで字を書いたりする珍芸で客人の機嫌をとり、夜は明け方まで、何人もの男を相手
に肉のもてなし役になるってわけだよ。」

「ひぃぃッ、か、かんにんッ・・・・ゆるしてっ・・」

「お前たちは母娘でお座敷ショーに出演して、仲良く膣と肛門でバナナを切ったり、卵を呑んだり
吐き出したりする芸を満座の中で演じて、ご主人様がたの機嫌をとり結ぶメスになるってわけだよ。
面白そうだろう?え、それだけじゃないよ。千絵、お前の好きなほうを選ぶんだよ!母娘ですっ裸
で旦那さまをおもてなしして、ご奉仕するか、それとも、娘を何人もの男に姦られたあげく、花電女
郎に売り飛ばされるほうがいいか。え、千絵、どうなんだい?返事をおし!」

千絵は受話器を握りしめたまま、声をたてて号泣した。

「どうしたね?返事は、え?返事がないところをみると、めぐみを淫売奴隷にするほうがいいよう
だね。」

冷酷に信代は責め立てる。

「ま、待ってッ、待ってくださいッ・・・うぅッ、あぅッ・・・わ、わかりましたわ・・・めぐみも、めぐみも
千絵と同じように、旦那さまにお仕えさせます・・」

「娘を旦那さまのメスにするんだね、千絵!」

信代は仮借なく責め立てる。

「ハ、ハイ・・・」

「はっきり、お言い!千絵!めぐみを牝にするんだね?どんなんだい?」

「は、はいっ・・・め、牝にします・・・うぅっ・・・」

「もう一度!」

「めぐみを、めぐみを牝にします・・・母娘で、メスになりきってはげみます・・ど、どうぞ、よろしく
お願いします・・・」

ついに、血の吐くような思いで千絵は折れた。
「よし、そのことばを忘れるんじゃないよ!、それじゃ、これから、おまえたちスッ裸で玄関にお
出迎えするんだ!」

「は、はいっ・・・・うぅっ・・・・」

「めぐみもたった今からパンティーを穿くことは許さないよ。母娘でスッ裸で土下座でお出迎え
するんだ!玄関先で、すぐにめぐみはひろげられて膣から肛門にかけて検分されるんだからね!」

「ひッ、ひぃぃッ・・・そ、そんなッ・・・」

「嫌かい?嫌なら、輪姦のあとすぐにめぐみを肉市場で競り売りにかけるよ・・・娘にはしっかり
因果を含ませるんだね。」

「ハ、ハイッ・・・」

「じゃあ、今からメスの作法をおしえてやろうね。・・・玄関の鍵は開けておきな!それから、め
ぐみとすっ裸でならんで、正座して旦那さまを待つんだ。聞いてるのかい?」

「は、はい・・・・き、聞いています・・・」

「玄関の戸が開いて、ご主人さまがはいって来られたら、そのまま、額を床にこすりつけて、ご
挨拶するんだ。うんと、甘ったるい声で『旦那さま、いらっしゃいませ、お待ちしておりましたの』と
申し上げてから、二人同時に面を上げる。言っておくが、そのときおっぱいを隠したりしては駄目
だよ。二人とも、おっぱいを曝してごあいさつだよ。いいね!」

「は、はい・・・・・・」

「それからね・・・」

千絵は泣きじゃくりながら返事をしている。

「上がってこられただんな様の足に口づけをしてから、立ち上がって全身をさらすんだ。旦那さま
の視線が当然、若いめぐみのほうい行くだろうからね。そうしたら、めぐみは、にっこり笑いかけて、
股を開きながら、こう言うのさ。『旦那さま、今日から、お母さまと一緒にお側にお仕えしますオマ
ンコ奴隷のめぐみです。どうぞ、よろしくおねがい、いたします』とな。」

千絵は泣いて泣いて嗚咽していた。しかし残忍な香苗の言葉は続く。

「お前のほうも、一緒に股をひらいて、丸見えにしながら、娘と声を合わせてお願いするんだよ。
今夜はめぐみの貫通式だからね。え、聞いてるのかい?」

「は、はいっ・・・・」

千絵は泣くばかりであった。

「メスは何よりもお色気が大事だからね。言っとくが、逃げようなんて考えるんじゃないよ。お前
たちは監視されてるんだからね。ちょっとでも怪しい素振りがあれば、おまえたちは肉市場に売り
飛ばす段取りになってるんだからね!」

「ハ、ハイッ・・・」

「それから、万一、旦那さまがめぐみのメスとしてのつとめぶりがお気に召さなかった場合でも、
めぐみはソープ女として売り飛ばすからね。メスとしての色気と心得をしっかり仕込んでおくことだ
ね」

恐ろしい電話はそこで切れた。千絵は電話台のところにへたりこんで、嗚咽した。これから身にふ
りかかる恐ろしい運命に怯えて全身がふるえだしてとまらないのだ。

「ママ、どうしたの?どなたからの電話なの?」

二階から髪の毛の長い美少女が降りてきた。今年中学二年になったばかりのめぐみは清楚そ
のものである。美しい母はセーラー服姿の娘の肩を抱くと、涙を拭い、意を決して唇をひらいた。

「めぐみちゃん、ママがこれから言うことをよく聞いて、ママの言うとおりにしてくれないかしら?」

「どんなことなの、ママ?」

「あ、あのねぇ、こ、これからママの大切なご主人さまが、こちらにいらっしゃるの。だから、・・・
ママ、ここでからだのご奉仕で、旦那さまのご機嫌を取り結ばなければならないの・・・めぐみちゃ
んにも分かるでしょ?・・・」

人妻の声はしどろもどろであった。

「もうすぐいらっしゃるから、ママ、まる裸で玄関でお出迎えしなければならないの・・・」

現代娘らしくめぐみはポォッと頬を染めて応えた。

「あら、ママ、めぐみだって、それぐらい分かりますわ。からだのご奉仕でご主人さまに遊んでい
ただくんでしょ?。めぐみ、お寝間にお布団を敷きますわ。めぐみのことは心配しないで。ママ、
うんと旦那さまに甘えられればいいわ。めぐみ、旦那さまがママのところからお帰りになるまで、
部屋から出ませんから」

「そ、そうじゃないの、めぐみちゃん、旦那さまは、めぐみちゃんのからだにも関心がおありなの・・・
だから、ふたりで裸でお出迎えしなければならないのよ。」

「ママ、そ、それじゃ・・・・」

絶句する娘の肩をひしと抱き締めると美しい人妻は泣きながら告白した。

「そ、そうなの・・・お願い、ママを笑わないで。ママね、旦那さまの奴隷なの。旦那さまがお命じに
なれば、いつでも、どこでもまる裸になってからだをひらいて、ご機嫌を取り結ばなければならない
し、旦那さまのご命令は絶対なの・・・そ、それで、今度、旦那さまは、めぐみちゃんを、ママと同じ
メス奴隷になさりたいというご意向なの・・・・・・おねがい、ママと一緒に地獄に堕ちて。ふたりでお
色気をふりまいて、旦那さまにあそんでいただく肉の玩具として、お側にお仕えする身になるのよ・・」

「ママ、・・・」

「めぐみちゃん、ママを許して・・・今日からは、わたしたち、生まれたままで旦那さまにお仕えする
メス奴隷にならなければならないの・・・」

「そ、そんなっ、い、いやぁっ、・・・・」

「ご、ごめんなさい・・・で、でも、こ、こうするしかないの・・・これからだんな様がいらっしゃるわ・・・
わたしたち、スッ裸でお出迎えよ・・・・」

「い、いやぁっ・・・・お、おかあさまっ・・・いやっ・・・」

「だめ・・・・でも、めぐみちゃんは、今日だけはパンティーをつけることを、ママ、お願いしてみるわ
・・・でもママはパンティーを、もう穿いてはならないメスなの・・・だんな様にお目にかかったときは、
すぐにからだをひらいて、膣から、お尻の孔まで、丸見えにして、ご挨拶するのが、メスの心得な
のよ・・・」

「マ、ママ・・・・」

「ゆ、ゆるして。めぐみ・・・ママ、も、もうどうすることもできないの・・・・」

母娘は抱き合ってさめざめと泣いた。





                       第一章 完


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