―どうしたのかしら?もう、7時を過ぎているというのに
 キッチンで夕食の支度をしながら、沙知は、何度となくリビングの時計を見ながら、一人つぶやいた。一人娘の未希の帰宅が遅いのだ。部活のテニスの練習を終え、時間を忘れて友人達とおしゃべりをしていたとしても遅すぎる。
 7時半になって、沙知は重い腰を上げて、娘の通う高校に電話を入れた。しかし、宿直の教師から、5時前に校門を出たと聞いて、激しく胸が震えた。
 
―まさか、事故に遭ったのでは?
 最寄りの警察に電話しようとした矢先、電話が鳴った。
 
―もしもし、高岡でございますが・・・・・
 
―ああ、奥さんかい?高岡沙知さんだね?
沙知の耳元に飛び込んできたのは、妙になれなれしい男の声であった。
 
―ど、どなたです?
 
―あ、ああ、オレの名前を聞いたってしょうがねーだろ?はじめて電話するんだからな。 電話の相手方は、そういうとケッケッケ、と笑った。沙知の総身に鳥肌が立った。
 
―いやぁ、奥さん、いつ見てもきれいだね。しょっちゅう奥さんのこと見てたんだけど、気が付いてたかなぁ?昨日は、ブルーのパンティーを干してたよな?へへへ・・・・
 
―ど、どんなご用件ですの?あたくし、忙しいんですから、くだらないお喋りしている余裕はないんです。
 沙知が電話を切ろうとしたところ、男は「ちょい待ち」と制止した。
 
―奥さんさぁ、未希ちゃんまだ、帰ってないんだろ?え?
 さぁ〜っ、と沙知の全身から血が引いた。ひょっとしたら、娘は誘拐されたのだろうか。
 
―へへへ、そうさ、奥さん、お察しの通りだよ。お嬢ちゃんは、今オレたちのところにあずかってるのさ。未希ちゃんは聖ヨハンナ女学園高校の2年生、たしかテニス部だったかな。へへへ、まだ17歳っていうのに、いいオッパイしてんじゃないか、母親似なのかな。それにお×んこの毛も、もう一人前だなー
 
―あ、あなたたち・・・・・
 沙知は絶句した。未希が怖ろしい男達に拐かされて監禁されていることは明らかだった。
 
―へっへっへ・・・・心配するこたぁねぇよ、まーだ、なんにもしてねーよ。でも、これから、未希ちゃんがどうなるかは、奥さんしだいだな。うむ、まさか警察に届けようなんては思ってないよな。そんなことしたら、どうなるか分かってるだろう?え、
 
―む、娘を出して、出してください・・・・
 
―あぁ、オレが嘘を吐いてるっていうんだな。うむ、ちょっと待ちな、・・・・オイ、こっちに連れてこい・・・・さ、お母さまに電話だよ・・・・
 とたんに、沙知の耳元に飛び込んできたのは、朝元気に出かけていった未希の泣き声であった。
 
―マ、ママ、た、助けてっ・・・・
 
―おっと、そこまでだ。分かっただろ、奥さん。
 
―お、お金なら、・・・・お金なら、さ、差し上げます・・・・ど、どうか、娘を帰して・・・・
 
―カネか、うむ、カネもいただくが、その前に奥さんに頼みたいことがあるんだがな、どうだろう、オレのささやかなお願いをきいてくれるかな?
 
―ど、どんなことでしょう?
 
―電話をもって二階に上がんな!
 沙知が受話器を握りしめて二階に上がった。高台にある沙知の家は見晴らしが良く、遙か彼方に都心のマンションやオフィスビルがいくつも連なっている。
 すかさず、男が命令する。
 
―よし、寝室に行きな、それからカーテンをあけるんだ!
 どうやら、男は遠くから望遠鏡で覗いているらしい。男の口調はぞんざいになった。
 
―あ、開けたわ。
 
―ようし、それじゃストリップだ、高岡沙知!
 沙知はひっ、と声をあげた。
 
―ナーニ恥ずかしがってやがんだ。娘を返してほしくねーっていうのかい?え、沙知! ―い、いたしますっ・・・・は、裸になりますから、ど、どうか娘ばかりは・・・・
 
―四の五の抜かすんじゃねー、さっさとすっ裸になりやがれ!
 男は本性を顕わにして凄んだ。
 
―は、はい・・・・・
 
―そうだ、脱ぐ前に口上を述べるんだ。そうだな。「ご主人様、沙知は、すっ裸になります」って言うんだ。
 
―は、はいっ・・・・御、ご主人さま、沙知、す、すっ裸になりますっ・・・・・
 
―ようし、それじゃ、一枚一枚脱ぐ前にだな。何を脱ぐか口にしてから脱ぐんだ。いいな、沙知!
 
―は、はい・・・・
 沙知はワンピースのジッパーに手をかけた。
 
―ご主人様、沙知、ワンピースを脱ぎます
 スルリ、とシルクの服がほっそりとした沙知の躰から抜け落ちる。遠くのマンションから高精度の望遠鏡で沙知の姿を観察しているのだろう。
 
―ほお、なかなか言い趣味してるじゃねーか、え、沙知、花柄のパンティーかい。じゃ、次はブラジャーだ。沙知!『ご主人様、沙知、プラジャー外して、おっぱい出します、どうぞごらんくださいまし」って言ってみな!
 
―そ、そんなこと、い、言えるわけないでしょ!い、いい加減にしてよ!
 
―ほう、そうかい、娘がどうなってもいいってんだな。
 とうとう、沙知は泣きだした。
 
―ま、待って、い、言うわ、言えばいいんでしょ!「ご、ご主人様、沙知、ブ、ブラジャーとります、ブラジャー、とって・・・・おっぱい出します・・・・」
 後ろに手を回して、ホックを外すと、ぶるん、と勢いよく白い乳房が溢れ出る。
 
―ちゃんと言えるじゃねーかよ、奥さん、お、なかなかの巨乳じゃねーか、沙知、え、年頃の娘がいるとは思えねーぜ。
 
―は、はい・・・・・
 
―ようし、じゃ、いよいよご開帳だ。分かってるな。
 
―は、はい・・・・・御、ご主人さま、沙知、パ、パンティー、ぬ、脱ぎます・・・・
 
―馬鹿野郎!ナーニ上品ぶってやがる!「沙知、パンティー脱いで、おまんこまるだしにします」って言うんだよー
 
―そ、そんなっ・・・・ひ、ひどいっ、ひどいっ・・・・
 
―娘を姦っちゃった後で、ソープに売り飛ばしたっていいんだぜ。
 
―わ、わかりましたわ・・・「沙知、パ、パンティー脱いで、お、お×んこ、まるだしにします・・・・
 パンティーを脱ぐと、沙知はもう助からないと思った。
 
―ようし、ゆっくり後ろを向きな、沙知!ベッドに上がれ!
 
―はい・・・・
 
―四つん這いだ。ケツをぐっと付きだしてみろ!
 後は怖ろしい男のいいなりだった。沙知はガラス戸に向けて臀を突き出す。
 
―ああ、良い眺めだ。沙知、もっとケツをあげろ、それから股をひらくんだ。いっぱいにな!
 なにもかも見られている。沙知は全身がカァ〜ッ、と熱く火照ってくる。
 
―よっく見えるぜ、沙知、まるみえだ
 
―お、おねがい、そ、そんなことおっしゃらないで、は、恥ずかしいっ、恥ずかしいわっ・・・・
 
―ケツを振れ、
 男は容赦なかった。

 玩弄は長かった。男の命令どおり、沙知はさまざまな淫猥なポオズを取らされつづけた。
 
―ようし、それじゃ今日のところは、ここらへんで勘弁してやろう。さよなら、奥さんまたな。
 唐突に電話が切れた。

 「ただいま、ママ、遅くなってごめんね。」
 ガラリと音をたてて、未希が帰ってきた。
 沙知はハッとした。男はすんなりと娘を返してきたのだろうか?それにしては早すぎる。安堵と不信に苛まれながら、沙知はあわてて、裸の上にガウンを羽織ると階段を走り降りた。
 セーラー服姿の可愛い娘が靴を脱いで上がってくる。
 「ママ、どうしたの。何度も電話してるのにずっとお話中なんですもの。」

 それじゃ、それじゃ・・・・?さっきの出来事は?あれは?あれは一体なんだったの?
 ぎょっとして、沙知は娘を見つめた。そのとき、沙知は娘の目の中に思ってもみなかったものを見た・・・・・





疑惑