闇に散る

次期大臣との呼び声も高い女性政治家である宮下恵子の、金権スキャンダルを週刊誌にスクープ連載していたフリーライター立原麻由美が、国家保安法違反容疑で連行された事件は少なからず世間を驚かせた。麻由美が某国の情報組織に協力し様々な反国家的活動を行っているとのタレ込みにより、国家保安部思想犯取り締り課の手で身柄を取り押さえられたのだ。まったく身に覚えのない容疑を被せられ無実を叫ぶ麻由美に対し、特捜課長、朝霧玲子の非情な取り調べが昼夜を分かたず続けられていた。


玲子の情け容赦ない尋問に、無実を泣き叫ぶ麻由美の声もかすれ果てていた。全裸に引き剥かれた体を天井から吊されたまま、すでに8時間が経とうとしている。数えきれぬほどビンタされて顔を腫れ上がらせた麻由美の顔が、更なる恐怖で醜くひき攣った。くねくねと身を躍らせる不気味な蛇が、麻由美の押し広げられた秘肉に、そのいやらしく照り光る頭を今まさに潜り込ませようとしているのだ。

「嫌ゃぁああーーーーーっ!やめて・・やめてぇええ〜〜っ!」

麻由美の絶叫にも、眉ひとつ動かさず玲子は言った。

「思想犯特捜課を甘く見ないことね。地獄はこれからよ!」
天井からぶら下がるヤカンに、一本また一本とペットボトルの水が注ぎ込まれる。ヤカンに結ばれた紐の一方は滑車を通して、麻由美の剥き出しにされたクリトリスに結わえられているのだ。麻由美の秘肉からは大きな蛇の尻尾だけが顔を覗かせて、いやらしく蠢いていた。体内に入った蛇が蠕動するおぞましさに狂おしく腰を振らずにはいられない。残酷にもその動きが一層クリトリスへの責めを強烈なものにするのだ。限界まで爪先立つ麻由美の内股は筋を立ててヒクヒクと痙攣している。締め付けられたクリトリスの根本は今にも千切れんばかりで暗紫に変色した先端は破裂せんばかりに腫れ上がっていた。

「うふふ・・ねぇ、いつまでも、強情はってると千切れちゃうわよ。自白させてくださいって素直にお願いしてごらんなさいよ」

猫なで声で麻由美の乱れ髪を梳いてやる玲子。だが次の瞬間厳しい声で部下に命じる。

「もう一本追加してっ!」

白目を剥いた麻由美の口から絶叫が迸った。そしてついに狂ったような奇声を立て続けにあげながら失神するのだった。その後も失神するたびにバケツの水を浴びせられ、取り調べ開始から12時間後、麻由美は最も罪の重いA級思想犯として身に覚えのない容疑を連ねられた自白調書に自ら署名していた。
直ちに、麻由美はA級思想犯専用の収容所に送致された。3畳ほどの不潔な独房には通路から電球の明かりが僅かに差し込むだけだ。これからどれだけここで過ごさねばならないかと考えると発狂しそうになる。麻由美は看守に無実を訴え続けた。そして7日目に面会人があると看守に告げられた麻由美は、そこに僅かな救いの希望を抱き面会時間を待つのであった。
「いやぁ〜〜っ!こ、こんな・・・」

あまりにも浅ましい格好に麻由美は狼狽の悲鳴をあげる。

「A級思想犯は誰もみんな、こうして面会を受けるのがここの規定よ。面会時間は5分間、分かった?」

冷たい看守の声と同時に、面会人がドアを開けた。ゆっくりとドアを閉めてこちらを振り向いた面会人の顔を見た瞬間、麻由美の口から悲鳴が響き渡った。

「うふふ・・初めましてかしら?立原麻由美さん」

そこに立っているのは宮下恵子その人だったのだ。

「あなたの書かれた記事は、とっても楽しく読ませて頂いてましたのよ。続きが読めなくなって残念ですわ。ところで凄い格好ですわね、目のやり場に困りますわ。ほほほ・・あらご免なさい、そうそう今日こうしてわざわざ面会に来たのは是非あなたにお伝えしときたい事がありましたの」

宮下恵子は囁くような声で、麻由美を陥れた張本人が自分である事。特捜課長の朝霧玲子は恵子の大学時代の友人で、今回特別に協力してくれた見返りに本庁への栄達が約束されている事等々を得々と話して聞かせた。

「ふふっ・・これで分かったでしょ?私の力で、あなたを速やかに絞首台に送ってさしあげますわ。もちろん、その時は私も立ち会わせて頂くつもりよ!」

「ひぃ〜〜〜っ」

笛のような声を喉から絞り出して麻由美は身悶えする。

「権力の力を思い知るのよっ!」

浅ましい姿を晒して絶望に狂う麻由美を小気味よげに見下ろしながら、恵子は、冷酷に言い放った。

立原麻由美が囚われの身となってから、異例の早さで処刑が執行された。宮下恵子の要望で
一般的な落下式ではなく、ぶら下がり式で執行されたのだ。苦悶に悶え大股を開いてのたうち苦しむ麻由美の姿を存分に見物する為である。15分が過ぎぴくりとも動かなくなった麻由美の姿を満足げに見上げる恵子。

「死体は指示通り、犯罪資料博物館へ送ってちょうだい」

(うふふ・・・まだまだ、死んだくらいじゃ許さないわよ!)

恵子は惨めにぶら下がった麻由美をまだ飽きもせず眺めている。その口元には凄惨な笑みが浮かんでいた。
犯罪資料博物館の地下一階。ひんやりとした空気が漂う中、運び込まれた立原麻由美の死体が大きな水槽の中へ無造作に投げ込まれる。ここで硬直と腐敗防止の為、特殊溶液に一晩漬け込まれるのだ
一晩、特殊溶液に漬け込まれた麻由美の死体は次の日、同じ建物3階の剥製作業室へ移された。これからベテラン剥製技師の手で、見事な人間剥製に加工されるのである。
犯罪に関する様々な資料を展示する犯罪資料博物館。この博物館で、もっとも見学者に人気があるのが重罪犯罪人を剥製にして展示したコーナーである。薄暗い照明が灯るフロアの巡路に沿ってスポットライトに照らし出される剥製にされた犯罪者たち。

その中のA級思想犯罪者コーナーに今、立原麻由美は一際目立つように展示されていた。無実の罪で処刑された恨みと絶望に歪んだ顔、そして惨めな全裸の姿態を興味本位の見学者たちに、この先ずっと晒し続けねばならないのだ。ある日突然の連行から僅か半月しか経っていなかった。